商品力

企業を牽引する力=商品力です。このページは色々な事業の収益をそれぞれ上げていくのではなく、先ず企業の代名詞となる商品を作るということについて述べます。

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 製造業で2012年経常利益ランキング上位に顔を出しているのは日立製作所、三菱電機、キヤノン、ファナックです。次にキヤノンを見てみたいと思います。

キヤノンはカメラ、複写機を中心とした会社です。1990年代の後半デジタル化の波が押し寄せていました。(2002年にデジカメの出荷台数がフィルムカメラを逆転)

 

<Photo data>2009/06/10 安比高原のレンゲツツジ(撮影を始めたら突然の降雨 この後自分もカメラもびしょ濡れに)
EOS5DMARKII EF24-105mm f4/L IS USM 1/20 f16 

 

カメラはキヤノンの代名詞。フィルムは質感に優れていました。これをデジタルで実現するには大変な関門でした。武田薬品は経営者の決断で十数年後をターゲットに会社を再構築したと前ページでふれましたが、キヤノンもそうです。1995年社長に就任した御手洗社長も、就任後に到来したデジタル化の波に対処するため、それまで事業化を目指してきた光ディスクやPC事業の撤退を決意。そのリソースをカメラなどのデジタル化へ全て振り向け、大きく組替えしていきました。デジタル技術は画像エンジンやGUI、背面ディスプレイなど多くの新技術が必要でしたが、ディスクやPCの技術者は従事していた経験がデジタル化にうまく活きて、内部転換でデジタル化を乗りきっていったのです。

一方、電気各社は放送のデジタル化でTVと周辺機器を両手に抱え、デジタル化は早期に実現できたものの開発、製造などやがてOEM等で分離していきました。キヤノンは自社開発自社生産とその後も独歩の技術進化をさせたため、デジタルカメラにおいてもNo.1を維持し続けたのです。(日本でデジタルTVの放送が始まったのは2003年平成15年。アナログ放送が終了したのは2011年7月24日です。)

キヤノンのこの事業の組み替えが成功した背景には経営者の意志がありました。御手洗社長(http:// systemincom/main/kakugen/御手洗富士夫)は、キヤノンのあるべき姿を描き全体を最適化することを経営の基本とし、デジタル化も全体最適の一貫だったのです。フィルムカメラでNo.1のレンズ群をデジタルでも継承させたことも電気各社にはない有効な戦略でした。

この結果、デジタル一眼レフEOSは一層競争力のある商品になり、市場占有率を高めていきました。武田薬品と同様、商品力を高めることで企業のブランドイメージを維持高揚させたのです。キヤノンの収益は2000年度、純利益は約1300億円でしたが、2011年には2400億円と倍加しています。

商品力は直近の企業を支えるとともに、強い商品でできあがったブランドは更に長期的な企業力をもたらします。各種利益が出て帳尻が合っているということより、やはり競争力のある商品作りが結局は大事だと言えるのではないでしょうか。

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<Photo data>2011/05/07 大正池(未だ残雪が所々にある5月の大正池)
EOS5DMarkII EF70-200mm f/2.8L IS II USM 1/4 f/16

2013/04/07
rev1 2014/01/21

福間和則