事業ドメイン変更企業の業績

ドメインを見直し最適化を行った企業事例です。

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<Photo data>2012/12/13 三瓶山 ( 左が男三瓶1,126m、右が子三瓶961m)です。頂上付近に少し降雪があります。  EOS5DMarkII EF24-105mm f/4L IS USM 1/400 f13

2012年度の日経企業ランキングよりその他製造業の上位企業を見てみました。

結論から言いますと、ドメイン変更で構造改革した企業は見事に体質転換が出来ています。
下に比較表をのせています(売上高と純利益の単位は億円です)。
事業の組み換えを行い、赤字事業を整理するというベーシックな対応だけでは収益は高めていますが限定的です。

さらに、2014年度の日経企業ランキング(日本経済新聞 2015年5月22日掲載;純利益ランキング)を見てみます。
2012年に続き、自動車とその関連事業、投資銀行、通信が上位です。上位陣のジャンルは2012年と変わりません。
業態別には、通信系の収益が高く、かつて上位だった製造業はランキングが低下しています。製造業では、13位の第一三共、20位のキヤノンだけという結果です。

日本の製造業は、2000年以降10年間くらいに構造改革を行った企業は、いったんは業績を持ち直してはいますが、その他の事業で押し上げることが出来ぬままランキングは上昇していません。

<Photo data>2014/07/18 同じく夏の三瓶山です。草原は春に山焼きされ再び緑豊かになっています。EOS5DMarkII EF24-105mm f/4L IS USM 1/1250 f8

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2000年 2010年 2014年 2015年
売上 当期利益 売上 当期利益 売上 当期利益 売上 当期利益
武田薬品 9,643 1,468 14,659 2,977 17,778 -1,454 18,074 835
日立製作所 84,169 1,043 96,658 3,471 97,749 2,174 100,343 1,722
三菱電機 41,249 1,247 36,394 1,121 43,230 2,346 43,934 2,284
キヤノン 27,813 1,340 35,574 2,486 37,273 2,548 38,003 2,202

(各社決算短信より(連結ベース):単位は億円、2016/07更新)

事業ドメイン転換企業例(上の表の4社をセレクト)について述べます。
武田薬品は1995年、将来の高齢化社会(今のことです)を予測し、当時としては大胆な事業転換を行いました。この切り替えは成功し、大幅な収益が達成出来ています。
ただ、その後も投資拡大し続けたことで、最終的なM&A案件で大規模な損失が発生しています。この結果が成功するかしないかは結論が出来ていませんが、一貫した洗い替えで、正面突破となっていますので最終的にはうまくいくと思われます。

総合電機二社について述べます。
上の表の中の2社は似通った戦略です。どちらも同類の事業損失を抱えています。バブル崩壊前まで何の問題も無かった半導体、その後に投じた液晶等の投資によって損失を抱え込み、他の事業と平均化することで10年くらいかかってようやく切り離すことができています。
問題のある事業を再編し、その他の事業に支援してもらいながら乗り切っていくという進め方です。
収益は好調ですが、底上げにはなっていません。
牽引できる事業がないことが響いています。

ドメイン変更でチェックした3番手はキヤノンです。
キヤノンは、アナログカメラを永く続け、同業から大分遅れてカメラ事業のデジタル化に取り組みました。この遅れて取り組んだことは、結果的に他のカメラメーカーとは異なった進め方となりました。
デジタル化の前に抱えていたPCやLCD部門のノウハウや開発力を全て中止しデジタルカメラに注ぐという、内部組み替えではありますが、全面的な洗い替えをしました。
デジカメ他社はコスト中心でOEM生産に動き、デジカメの世代交代に後れが出ていく中、エレクトロニクスの人材を大々的に投入し独自路線で進めたキヤノンに逆に大きく引き離されて行きました。

カメラの収益は上がり、収益構造は良化します。
そのデジカメにもコモディティーが見え始めると、カメラで蓄えた資金で次なるドメインのメディカル分野などに注入し始めました。
(2017年1-6月第117期の連結決算は、純利益が1243億円と医療分野のドメイン獲得などの影響で収益を大幅に押し上げることに成功しています。)

構造転換をしっかりやって、次の波動にうまく乗せていくことが出来れば成功しています。その読みは短期的でなく、長いスパンでど見つけだされたものでなければなりません。
調子の悪いものをカットすることだけではうまくいってません。

日本の製造業は、バブル以降、アジアの台頭で大きくポジション低下がおこりました。変わり行く潮目が見えなかった可能性があります。(または動けなかったのかもしれません)

デジタルになって高速サイクルです。
2000年以前は新事業を興しても衰退までのサイクルは50年くらいありました。デジタルモデルはライフサイクル(勃興から衰退)は半分くらいになっています。
もはや、事業を継続しているだけでは、気がついたときは撤退しかないといったこともおこっています。
もう一つ、牽引するものがなければ、ライフサイクルが短化している中では勝負しにくくなっています。
とりわけ投資回収の期間が長い製造業では難しく、次に手が回らないということがランキング低下につながっています。

また、エレクトロニクス中心に起こったデジタル化は、見える範囲では商品の小型化と良質化が良いように見えますが、ドメインそのものは変わっていないということに気づくべきです。

もう一つ、原理的な開発に手が回らず、新たな事業はM&Aでという動きがあります。M&Aで獲得したビジネスは裾野が狭く、原理的、基礎的な面が欠落しやすくなっています。M&Aをやるときは、基礎開発も含めて行うことが必要です。
本業で稼ぎ、常に将来に向かって基礎開発は止めない。しかも分野を問わずやり続けなければならないことなのです。

 

初稿 2013/04/07
途中省略
19th 2018/08/08
20th 最近の傾向からみた分析を追加 2020/11/08

Kazunori  Fukuma