オーディオ フォノイコライザーAD-2850を組み込む

プリアンプ(アキュフェーズC-2820)にフォノイコライザーAD-2850を組み込んだ時の記事です。音の評価は私的なコメントです。

<Photo data>2017/05/05
大山(だいせん、標高1729m、別名伯耆大山)
Canon EOS-1D MarkⅣ
EF70-200mm f/2.8L IS Ⅱ USM
IOS50 105mm 1/1600 f2.8
Adobe Lightroom モノクローム2

 

<イコライザーを検討する>
手持ちのプリアンプの使い方は、レコードの再生以外はバランス入力です。プリアンプを更新したとき、専用イコライザーとするか今回の様なスロット装着にするか悩みました。
専用イコライザーからXLRで出力するのが良いのですが、プリアンプのポートに空きがありません。外部イコライザーからRCAでコネクトするなら、スロットTypeのPhonoイコライザーでも良いと考えたのがきっかけです。

もう一つ問題があります。プレーヤーはプリのPhono端子とカートリッジの距離が近くても、モーターの回転機構からくる振動や線間の同相ノイズなどいくつか対策しなければならない問題があります。
これらのことを考慮しつつ以下のような選択をしました。

<挿入するイコライザー>
アキュフェーズの候補はAD-2850です。Phono専用機C-37との比較では、入力換算雑音はC同程度ですが、定格出力時のS/NはC-37に比べ見劣りがします。
カートリッジの入力レベルが低いとC-37ほどの性能は得られないのです。大分時間をかけて考えましたが、この際MC型はさっぱりと諦め、カートリッジはMM型で行くことにしました(出力を上げて対処する)。
調べていくと、最近のMM型はMC型と比べ遜色のないものが出ているのです。

ちょっと脱線致します。
C-37はディスクリート構成の3パラ6プッシュ差動入力。AD-2850も同じ回路構成ですが、差動アンプの段数が半分です。この辺がバックグラウンドのノイズ性能に現れています。

戻ります。
もう一点、イコライザーを変えたら音が様変わりしたというのも困ります。プリアンプと同系統のなら問題ありません。AD-2850の基板材料やメッキも現用プリと同じでした。同じ音色と考えます。
ということで、自分的なシナリオではありますが、イコライザーは外部専用機ではなくスロット型のAD-2850に落ち着きました。

<外部的なノイズマージン対策>
①ベルト駆動用モーターの振動対策
カートリッジMM型で、マッチしていそうなターンテーブルも改めて探すことにしました。
ターンテーブルの駆動方式では、ダイレクトドライブは落選です。十分な除振が出来ません。ベルトドライブなどターンテーブルとモーターが物理的にセパレートされているものを探しました。
欧州のものを探していくうちに、国産でいいものを見つけました。マランツTT-15S1です。クラスは中級品だと思いますが、ベルトドライブで、モーターは穴を開けて隔離しています。シンプルな構造です。
足は3本フットで、これといった欠点が見当たらないプレーヤーだと思いました。
知り合いのオーディオショップで何度か再生してもらい、しかも標準で付属しているカートリッジもこれで良いと判断しました。

購入後は、以下の対策を追加しました。
モーターの回転によって、ほんの少しですがピックアップに振動がのってきます。これは、下の写真のようにモーター下部に1mm厚の振動吸収材 (foQ)を貼りつけ対策しました。もちろん、モーターはベースプレートと機械的に接触しないように固定します。

②RCAショートピンとスピーカーアース
アースをしました。
自分の機器は基本的にアースはしない方針ですが(アーシンググッズはその電位が問題で、バランスコネクトするときは不要。他のアースをするとむしろ外部から誘導ノイズを受ける方が多い。この考え方はこのホームページ内のアースに関するいくつかの記述に紹介しています。)、カートリッジからのアース線は次の様に処理しました。

AD-2850の入力は2chあります。左側(AD1)を使用しました。とりあえず右側(AD2)は空いており別カートリッジの拡張が可能です。オープンchはショートピンでふさぎました。(下記写真参照方)。

TT-15S1からイコライザーへの信号線は不平衡接続です。平行3線ケーブルの中央アース線をAD-2850のChAのアース端子につなぎます。
ChBのグランドにタンノイのスピーカーアース端子とコネクトします。
方法は、良質のケーブルで、イコライザーのChBで2本カシメて接続し、同じ長さでスピーカーのLとRに1本ずつアース線を配します。(写真の緑のテープの線をスピーカーアース端子へ1本ずつ接続、一点アースはAD-2850のChBになります)。
スピーカーアースはフランジやネットワーク内に電荷や外部からの電磁波をグランドする役目です(この方法はタンノイのアース付きスピーカーのみの対策になります。(関連記事を掲載しています)。
自環境では中高域の雑味が減少する効果があります。

<カートリッジ>
フォノカートリッジは独Clearaudio社の「Virtuoso」です。TT15-S1に当初から付帯していたものです。とても暖かみがあって音楽性が豊かな再生が可能です。予備を含め持っていたいカートリッジです。
他の機器は別記事のものを使用しました。

<イコライザー設定>
イコライザーとプリアンプのゲインは、プリアンプを18dB、イコライザーを40dBとしました。

<視聴コメント>
AD-2850の評価として、つぎのものをコメントします。
素人の評価です。

「P.Tchaiikovsky : Symphony No.5 in E minor, OP.64 Berlin Philharmonic Orchestra Cond. Herber Von Karajan Deutsche Grammophon Gesellschaft SMG-2028」
コントラバスの低弦(4弦)がしっかり再生されています。ホルンや木管、ヴァイオリンなどもひびきも十分で楽器も良く出ています。
カートリッジの公表周波数特性は20Hz〜20KHzと一般的なのですがブラスなどの音は高域側開放するような伸びがあります。高調波成分があって美音と感じます。
また、この盤では静寂な場面が到来せず、S/Nは普通の評価です。

「森山良子・カレッジ・フォーク・アルバム フィリップスレコード FS-8044」
若い頃の彼女の声を聴くことが出来ます。柔らかくみずみずしい声です。
Vocalは中央に音像が立ちます。
ギターの弦をはじく音に余韻があります。このあたりがCDやSACDより優れていると感じます。AD-2850で十分情景を引き出せていると思います。
S/Nも良くAD-2850でも全体の静寂性は非常に良好と感じました。

「SIMON & GARFUNKEL PACK20 CBS SONY SOPQ-1」
かなり使用しているディスクですが、P.サイモンのマーチンのボディーに共鳴した音は健在です。14bitのCD、例えばThe definitive SIMON and GARFUNKELと比較するとCDはどうしても深みの無い音です。アナログの良さはこの辺でしょうか。
このディスクは静寂感は余り良くありません。ノイズ処理をしているCDの方が良いと思います。

「JOHN COLTRANE STARDUST」東芝EMI LPR-88056
コルトレーンのテナーサックスは、目の前で発した音が束になって飛んでくるような音圧です。音の密度が高く感じます。
ウッドベースを弓で弾くパートが出てきます。空気をゴリゴリと震わす音を聴くことが出来ます。
このディスクは全体的に高域側にわたってサーというノイズが入っています。静寂感はこのディスクでは評価出来ません。

<全体的に>
AD-2850の静寂性は1曲だけですが全く問題ないと感じました。
特に良いなと思う点は、アナログ特有の倍音を伴っていることです。またクラシックは重厚感があってこのイコライザーで聴いていけると思っています。
尚、ノイズ対策があれば追加していきます。

K.Fukuma

1st 2017/05/20
2nd 誤字修正とコメント追記 2017/05/22
3rd コメント追記 2017/06/19
4th ミス修正 2017/07/02
5th 使用時間経過による視聴評価の若干の修正など 2017/07/06
6th 最近の傾向を含めて一部訂正 2020/08/19

 

My profile
Kazunori Fukuma

職歴前半は半導体デバイス開発技術者、後半は経営者としてやってきました。事業の立て直しや新規事業育成、競争戦略などを得意としています。
きっとお役に立てると思います。
投稿は主にAudio、写真、Programingです。Audio歴は50年(長いだけですが)です。学生時代のライブ活動、研究テーマがノイズ抑制だったことなどがきっかけで、音の追求は今も続いています。

Kazunori Fukumaをフォローする
Audio(オーディオ)
シェアする